海外旅行時にeSIMを使おうと思った場合、一般的には料金やデータ容量、利用期間といったものを考慮してプロバイダーやプランを選択するかと思います。
それともう一つ、アメリカに代表される国土の広い国では「カバーエリア」もとても重要なファクターになります。
日本で代表とされる3大キャリア(docomo, au, SoftBank)は、どちらも人口の99%以上をカバーしており、山間部などの特殊な地域を覗いては、ほぼどこでも問題なくインターネットが使えます。
しかし日本の約25倍の国土を持つと言われているアメリカでは、使うキャリア(通信事業者)によって利用できるエリア(カバレッジ)が異なるため、しっかりそこを理解して選ばないと「少し郊外に行くと繋がらない」といったことになりかねません。
今回はアメリカで利用できるeSIMの中で、いったいどれがどの現地キャリアを使っていて、どれが繋がりやすそうなのかを特集致します。
コンテンツ
アメリカの4キャリアとそのカバーエリア
まずはじめにアメリカの通信会社についてです。
アメリカではAT&T、Verizon、T-Mobile、Sprintが自身でネットワークを保有するMNO(Mobile Network Operator)の上位4社です。
2019年時点での契約者数は上から
AT&T: 1億5970万回線
Verizon: 1億5610万回線
T-Mobile: 8310万回線
Sprint: 5450万回線
となっており、上位2社が特に突出しています。
Sprintは日本のソフトバンク(現在のソフトバンクグループ)が2013年に買収したことでも話題となりましたね。
では次に各キャリアのカバーエリアをみてみます。
AT&Tのカバレッジ
AT&T公式サイトにあるエリアページではこのようなマップが表示されます。
AT&T Wireless Coverage Map
やはりアメリカのトップ2のうちの一つというだけあって、カバーエリアもしっかりしている印象です。
ただし、4G/LTEとそれ以外で表示を変えることができなかったので、一部3Gエリアも含まれているもしれません。
Verizonのカバレッジ
Verizonも公式サイトにエリアマップがありました。以下は4G LTEのカバレッジです。
Verizon Coverage Map
こちらもAT&T同様、サービスエリアに関しては非常に良いです。
公式サイトに載っている情報では、3億2600万人以上、アメリカの人口の98%以上をカバーしているとのことです。
T-Mobileのカバレッジ
T-Mobileの現時点のカバレッジマップがこちら。
T-Mobile Coverage Map
下側は一部メキシコが含まれていますが、アメリカだけで見ると、このマップをみる限りでは上位2社にあまり引けを取らない感じもします。
ただし、ネット上の評判では、都市部では問題ないものの地方でやはりまだ上位2社と比較して劣る部分があるようです。
尚、T-Mobileでは600MHzのLTEをサポートしている端末の場合、若干ですがエリアが拡大します。
Sprintのカバレッジ
最後にSprintのカバーエリアがこちらです。
Sprint Coverage Map
Sprintはエリアがあまりよくないと以前から聞いていたので、このカバーエリアを見た時は一瞬驚きました。マップをみる限りではAT&TやVerizonとほぼ同レベルと言えます。
これはSprint自身が公式サイトで出しているものではありますが、にわかに信じがたいので、自社発表ではないデータも調べることにしました。
sensorly のデータで4社を比較してみる
sensorlyは一般のユーザーが自分のモバイル通信の品質をチェックし、そのデータを共有できるアプリケーションで、世界中のリアルなユーザーデータを元にしたカバーエリアの情報を見ることができます。
4社の4G/LTEのカバーエリアを比較
この比較からはVerizonの4Gエリアが一番良いという結果になりました。
そして次にAT&T、僅差でT-Mobileという感じです。両社はほぼ同程度ですが、よく目を凝らしてみてみると、東海岸では特にAT&Tの方が密になっていてデッドゾーンが少なそうです。
Sprintはネットの情報通りやはり大都市部以外はかなり不安なカバーエリアです。
参考程度に3Gの比較も。
こちらもVerizonがやはり一番良く、次にAT&Tという順位。意外にもT-MobileとSprintはほぼ同程度で、もしかするとSprintの方が若干良さそうな気もします。ただ、両社は都市部以外ではやはり3Gにおいても少し不安が残ります。
もちろんsensorlyのデータはクラウドソースされたものなので絶対的に正しい情報とは言い切れませんが、4社を相対的に比較するにはある程度信頼できるものだと思います。
グアム、サイパンは要注意
日本から比較的距離が近く、人気の旅行先であるグアム、サイパンに関してはアメリカの領土ではあるものの、現地の通信ネットワークは米国本土のキャリアとは異なり、日本のNTT資本であるDOCOMO PACIFICなどが提供しているため、アメリカ向けのデータプランに含まれていないことがほとんどです。
4社カバーエリアについてのまとめ
4社カバーエリアについてのまとめ
公式サイトでのエリアマップと、sensorlyからのデータから、簡単にまとめると4社のカバーエリアは次のようなイメージになりました。
Verizonは一番カバレッジが良く、都市部以外にもかなり地方に足を運ぶような旅には一番良さそう
AT&Tもカバレッジは良い。都市部だけでなくある程度地方のエリアもカバーされている
T-MobileはAT&Tに迫るくらい良い。都市部や郊外であれば問題なさそう。また、600MHzのLTEをサポートしている端末はより良し
Sprintは都市部のみに滞在する旅程以外はあまりおすすめできない
アメリカのどこに行くのか、どこに滞在するのかによって、選ぶべきキャリアは変わってきますので、上のようなだいたいの各キャリアのカバーエリアの情報を頭に入れておくと良いと思います。
次にそれぞれのeSIMが4社のうちどれを使うのかをみていきます。
各eSIMが利用する米国のキャリア
旅行者を対象としたプリペイドプランに限定すると、アメリカで利用できるeSIMプロバイダーは現在10社程度あります。
それぞれのプロバイダーがアメリカでどのキャリアを使っているのかを調べてみました。
T-Mobile
T-Mobileは現地キャリアとして唯一旅行者向けのプリペイドタイプを展開しています。
もちろんですが、自前のT-Mobileのネットワークに接続されます。
実際の利用体験記事もいくつかあり、概ね快適に使えるようです。現地キャリアということでゲートウェイサーバーも米国内なので遅延も非常に少ないと思います。
Stork Mobile
ストークモバイルでは公式サイトにネットワーク情報がちゃんと記載されてます。
海外旅行者向けeSIMデータ通信サービス – ストークモバイル
ストークモバイルのeSIMを使えば海外旅行先でも手軽に、そして安価にインターネットを使うことができます。eSIMテクノロジーで海外での新しいデータ通信を体験しましょう!
アメリカでのローミング接続先はAT&Tです。したがってカバーエリアも特に悪くないはずです。
尚、ストークモバイルではローカルブレイクアウトを用いており、上記のT-Mobile同様アメリカ国内からインターネットに出て行くため、遅延が非常に少なくなるよう設計されています。(一般的なローミング通信のように一度日本へ通信が行きません。)
3HK(Three)
3香港のeSIMに関しては少しネット上で調べたところ、どうも米国ではAT&Tのネットワークを利用するようです。
尚、香港のThreeが提供しているということでゲートウェイサーバーは香港になり、その分アメリカからだと若干遅延があるかと思います。
Ubigi
次に日本のNTT Comが買収した仏企業Transatelが提供するUbigiです。
以下の通り公式サイトに現地でのネットワーク情報が記載されています。
Ubigi Coverage
アメリカではT-MobileとSprintが接続先キャリアになります。3Gと4G両方に対応しています。
この2社だとたぶんT-Mobileがメインネットワークになるかと思います。いずれにせよ複数のネットワークが利用可能であれば万が一片方に問題があっても切り替えることができるので安心感は増します。
MTX Connect
MTX Connectについては公式サイト上に接続先ネットワークの記載がなく、またネット上でも情報が見当たらなかったため、問い合わせたところ、アメリカでのネットワークはSprintを使っているという回答でした。
ということで、都市部以外での滞在予定がある場合は、注意が必要です。
GigSky
GigSkyも公式サイトに情報がなかったので直接問い合わせたところ、AT&Tを利用していると回答がありました。
尚、GigSkyはサンフランシスコ拠点の米国企業で、私自身も過去にバンコクでGigSkyのeSIMを使った時にアメリカ経由でインターネットに接続していました。したがってアメリカで使用した場合は遅延はかなり低いと思います。
ちなみに日本のauが提供している「海外データeSIM」もシステムはGigSkyのものを使っているため、使用するネットワークはGigSkyのeSIMとまったく同じはずです。
Flexiroam
Flexiroamは公式サイトに各国で使用するネットワークの情報を載せています。
Flexiroam Coverage
それによるとアメリカでのネットワークはAT&TとSprintです。ちなみに両方4Gのみのようです。
こちらもUbigi同様利用できるキャリアが2つあるということで、片方が繋がりにくかったり速度が遅い場合に切り替えることができるという点はメリットです。
Truphone
Truphoneも公式サイトに情報がなかったので、まずTwitterで問い合わせたところ、(なぜか)開示できないと返信があったので、仕方なく、コネを使って中の人にメールを送って直接聞いてみたところ、T-Mobileを使っていると返答がありました。
KnowRoaming
KnowRoamingも公式サイトに一切情報がなかったため、サイト上のチャットからサポートに問い合わせたところ、アメリカでのネットワークはAT&TとVerizonを使っているということでした。
これがもし本当であれば最強の組み合わせで、ネットワークに関してはアメリカで使うことができるeSIMの中でベストの選択肢ということになります。
RedteaGO
RedteaGoは公式サイトにローカルネットワークという情報が載っていました。
ここの情報からアメリカでの接続先はAT&Tということがわかります。
3HKやGigSkyなどと同じということですね。
各eSIMの米国でのネットワークまとめ
各eSIMの米国でのネットワークまとめ
T-Mobile: T-Mobile
Stork Mobile: AT&T
3HK(Three): AT&T
Ubigi: T-Mobile、Sprint
MTX Connect: Sprint
GigSky: AT&T
Flexiroam: AT&T、Sprint
Truphone: T-Mobile
KnowRoaming: AT&T、Verizon(*要確認)
RedteaGo: AT&T
全体的にみるとAT&Tがやや多いかな、といったところ。Verizonは非常に少ないです。
MTX ConnectだけはSprintのみということで、カバレッジに注意が必要です。それ以外は(もちろんアメリカのどこに行くかによりますが)ある程度カバーエリアもよく、使えそうなのであとは料金やデータ容量で好みのプロバイダーを選べばOKかと思います。